弁護士の井上です。

最近,母子家庭の貧困が社会問題となっています。

第4回(2016)子育て世帯全国調査(このレポートの14ページをご覧ください。)によると,離婚母子世帯のうち,父親から養育費を支払ってもらっているのは16.2%。

つまり世の中の84%の父親が,別れた妻の元にいる子供に,養育費を支払っていないのです。

 

「元夫と関わりたくなくて、養育費をもらわないことにしてしまった」

「離婚する時は請求方法を知らなくて、今更もらえるのか分からない…」

「やっぱり子どもをしっかり育てるためにも、きちんと養育費を受け取りたい」

 

そんな悩みを抱えているあなたに向けて、この記事では養育費の基礎知識養育費を払ってもらう方法をまとめました。

 

養育費とは?

父親も母親も,親権のあるなしにかかわらず,親であるということによって,未成熟の子供に対してその生活を援助する必要があります。

これを,生活保持義務といいます(民法877条)。

したがって,父親が親権をもっていないとしても,父親は母親に対して養育費を支払う必要があるのです。

 

 

養育費の相場

仮に以下のような条件の場合,養育費の相場はいくらになるのでしょうか?

  • 父親の年収:500万
  • 母親の年収:200万円
  • 子供の年齢:8歳と5歳
  • 親権者:母親

 

この場合,家庭裁判所の基準だと,父親が母親に毎月払うべき養育費の額は6万円~8万円となります。

 

実は養育費の相場は,家庭裁判所のホームページで公開されています。

一度あなたの条件と照らし合わせて、参考にしてみてください。

東京家庭裁判所の公開している算定表

※令和元年に算定表が改定されたために、以前よりも養育費の金額は高くなりました。

 

養育費を払わせる方法3つ

では父親に養育費を払ってもらうには,どんな方法があるのでしょうか?

ここでは3つ紹介します。

 

1.親同士で話し合いをする

可能であれば,まずは親同士で話し合いをしましょう。

子供の世話をする母親にとって,父親に養育費を請求することは,当然の権利であることをきちんと伝えましょう。

話し合いができない,あるいは話し合いをしても解決できない場合は,弁護士を通して話し合うこともできます。

直接の話し合いでは,互いに感情的になってしまうことも。

そんな時は代理人を立てることによって,解決することも十分期待できます。

 

2.家事調停を行う

親同士では話し合いがまとまらない場合,家庭裁判所で家事調停を行います。

調停というと難しい手続を想像されるかもしれません。

しかしほとんどの場合,調停委員がきちんと話を聞いてくれ,解決の方法を探ってくれます。

弁護士を立てることもできますが,弁護士をつけなくても調停の手続を進めるをすることは可能です。

 

3.審判手続きを開始する

裁判所を使っているとは言え,調停もあくまで話し合いの場。

ですので,調停がまとまらない(不調となる)場合があります。

そうすると,審判手続が開始されます。

この場合は,父親側,母親側の収入やそれぞれの事情を踏まえた上で,裁判官が妥当な養育費の額を判断します。

 

 

まとめ

離婚をしても,親子という関係がなくなるわけではありません。

父親は,たとえ親権を持っていなくとも,養育費を支払わなければなりません。

離婚後に,苦しい思いをしながら,子育てと仕事を両立させている母親はたくさんいると思います。

養育費を払わない父親に対しては,きちんと,親としての責任を果たしてもらいましょう。