~広島で遺言書作成を検討する皆さまへ~
もしもの時への備え
「自分の亡き後、家族が相続のことで揉めてしまったら…」
                「相続の手続きで、残された家族に負担をかけたくない」
                「お世話になった人に、確実に財産を遺したい」
ご自身の相続について考え始めた方の多くが、このような思いを抱えていらっしゃいます。
そして、その思いを実現するための最も有効な手段が「遺言書」の作成です。
しかし、いざ遺言書を作成しようと思っても、「何から始めればいいの?」「どんな種類があるの?」「法的に有効な書き方は?」など、多くの疑問や不安がつきものだと思います。
この記事では、遺言書作成をお考えの皆さまが、安心して一歩を踏み出せるよう、遺言書の基礎知識から作成の流れ、費用について、相続の専門家である弁護士が分かりやすく解説します。
遺言書作成が必要な理由
なぜ遺言書を作成しておくことが大切なのでしょうか。その理由は、大きく分けて2つあります。
1.家族間の争いを防ぐ「争族防止」
遺言書がない場合、誰がどの財産をどれだけ相続するかは、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)によって決められます。
しかし、この話し合いが円満に進むとは限りません。「長男だから多くもらうべきだ」「親の介護をしたのだから考慮してほしい」など、それぞれの思いがぶつかり、深刻な対立に発展してしまうケースは少なくありません。
かつては仲の良かった家族が、相続をきっかけに関係が壊れてしまう…そんな悲しい「争族」を未然に防ぐために、遺言書は大きな効果を発揮します。ご自身の意思で財産の分け方を明確に示しておくことで、相続人同士の無用な争いを避けることができるのです。
2.ご家族の負担を大幅に軽減
遺言書がない場合、残されたご家族は、非常に煩雑な手続きに追われることになります。
| 遺言書がある場合 | 遺言書がない場合 | |
|---|---|---|
| 遺産の分け方 | 遺言書の内容に従う | 相続人全員で遺産分割協議を行う | 
| 手続き | 遺言書に基づき、不動産の名義変更や預貯金の解約などを進める | 協議内容をまとめた遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名と実印の押印が必要 | 
| 必要書類 | 遺言書、戸籍謄本など | 亡くなった方の出生から死亡までの全ての戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書など、多くの書類が必要 | 
| 負担 | 少ない | 大きい(時間的・精神的負担) | 
このように、遺言書があるだけで、ご家族の時間的・精神的負担を大幅に減らせます。
3.遺言書を作成しておきたいケースの例
以下のような方は、特に遺言書の作成を検討されることをお勧めします。
例えば、夫婦の間に子どもがいないご家庭では、遺言書がないと配偶者だけでなくご自身の親や兄弟姉妹も相続人となり、その方々との遺産分割協議が必要になります。
相続人同士の仲が悪い場合や疎遠な場合も、遺産分割協議がまとまりにくいため注意が必要です。
相続人以外(内縁の方やお世話になった方など)に財産を渡したい場合や、特定の相続人に多く渡したい、あるいは渡したくないといったご希望がある場合も、遺言で意思を明確にしておくことが重要です。
相続財産が多岐にわたるときは分配が複雑になりがちなため、事前の指定が有効です。
                  さらに、個人事業主や会社経営者の方は、事業用資産や自社株を後継者にスムーズに引き継がせるために遺言が不可欠です。
加えて、再婚していて前配偶者との間にも子どもがいる場合は相続関係が複雑になりやすく、トラブルに発展しがちなため、遺言でルールを定めておくことを強くお勧めします。
遺言書の種類と特徴
遺言書の種類としては、大きく分けて自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。
                厳密には秘密証書遺言、特別方式の遺言などがありますがここでは割愛します。
自筆証書遺言
遺言者が、その全文、日付、氏名を自筆で書き、押印することによって作成する遺言書です。
                  (平成30年の法改正により、財産目録については自筆で書かなくてもよいこととなりました。)
メリット
自筆証書遺言のメリットは、いつでも手軽に作成でき費用がかからないことです。証人や専門家の関与が不要で、紙とペン、印鑑があればその場で作成できます。
                  さらに、内容を秘密にでき、誰にも知られずに作成・保管できる点も利点です。また、新しい遺言書を作成すればいつでも書き直せるため、修正が容易です。
デメリット
法律で定められた要件(全文自筆、日付・氏名の自署、押印)を満たさないと無効になるリスクがあります。自宅等で保管する場合は紛失・改ざんの危険も否めません。
                  遺言者の死後、家庭裁判所での「検認」という手続が必要となります。相続人全員に遺言の存在を知らせ、裁判所で遺言書の状態を確認することとなり、その分時間と手間がかかることとなります。
                  さらに、専門家のチェックを経ていないため内容が不明確であったり、法的に実現不可能な事項が含まれていると、有効性を巡って相続人間で争いが生じる可能性があります。
公正証書遺言
特徴
遺言者が公証役場に出向き、2人以上の証人の立会いのもと、遺言の内容を公証人に口頭で伝え、公証人がそれを筆記して作成する遺言書です。
メリット
公正証書遺言のメリットは、まず無効になるリスクが極めて低いことです。法律の専門家である公証人が作成に関与するため、方式の不備で無効となる心配はほとんどありません。
                  さらに、公証人と証人が立ち会うことで「本人の意思に基づいて作成された」という証明力が高まり、後々の紛争予防に効果があります。原本は公証役場で厳重に保管されるため、紛失や改ざんの心配もなく、家庭裁判所での検認手続きも不要なので、相続開始後は速やかに内容を実現できます。
                  加えて、遺言者が口頭で内容を伝えられれば公証人が筆記するため、自筆が難しい場合でも作成可能で、高齢等で公証役場に出向けないときは公証人の出張による作成もできます。
デメリット
一方で、公証人への手数料や証人への依頼費用が発生し、公証役場へ出向く(または公証人に来てもらう)手間がかかる点が挙げられます。
                  また、2人以上の証人を用意する必要があり、適当な人がいない場合は公証役場に紹介を依頼できますが別途費用がかかります。
                  さらに、公証人と証人には遺言の内容が知られるため完全な秘密にはできません。ただし、公証人・証人には守秘義務があります。
ご依頼いただいた場合の遺言書作成の流れ
井上法律事務所で遺言作成のご依頼を受けた場合は、基本的に公正証書遺言を作成しています。
                以下は、弊所でご依頼いただく場合の流れです。
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1. 初回相談、ヒアリング
遺言を作成する方のご希望を聞きとりして、どのような方式、内容の遺言が適切かアドバイスを行います。
また、今後の手続きの流れや弁護士費用についても説明をいたします。 - 
                  
2. 遺言書を作成される方の相続人、財産についての確認
弁護士は、遺言書を作成される方からの聞き取りや資料をもとに、遺言の対象となる財産(不動産、預貯金、有価証券など)の全体像を把握し、同時に、誰が法的な相続人となるのかを確認いたします。
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3. 遺言内容の打ち合わせと原案作成
財産と相続人を確認した上で、遺言書を作成される方と詳細な打ち合わせをします。
- 具体的な財産の分配方法
 - 遺留分を侵害していないか、あるいは侵害している場合の対策
 - 遺言執行者を誰にするか
 - 付言事項に盛り込みたい内容
 - 相続税の試算、場合によっては税理士とも打ち合わせを行い遺言の内容を検討します。
 
遺言を作成される方の意思を最大限尊重しつつ、法的に有効で、かつ将来の紛争を予防できるような遺言内容を検討いたします。そして、この内容を元に、弁護士が遺言書の原案を作成します。
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4. 公証役場との調整・打ち合わせ
作成した文案をもとに、弁護士が公証人と事前の打ち合わせを行います。
作成日時の予約や事前打ち合わせを行い、作成日当日の手続きがスムーズに進むよう準備を行います。 - 
                  
5. 公証役場での作成当日
予約した日時に、公証役場へ向かいます。公証人に自宅、病院等に来てもらって作成する場合もあります。
通常、以下のメンバーが同席します。- 遺言者本人
 - 弁護士
 - 証人2名
 
当日の流れは
- 本人確認
 - 遺言される方が、遺言の趣旨を公証人に口頭で伝える。
 - 公証人による遺言内容の読み聞かせ
 - 遺言者による内容の最終確認
 - 署名・押印(遺言者、証人、公証人)
 
弁護士が同席しているため、万が一、公証人とのやり取りで不明な点があっても、その場で適切なサポートをすることができます。
 
遺言書の保管
遺言書は、作成するだけでなく、確実に保管し、死後にその内容を確実に実現することが重要です。
公正証書遺言の場合
作成した遺言書の原本は、公証役場に保管されます。これにより、紛失、盗難、改ざんといったリスクから遺言書が守られます。公証役場で作成した遺言書の正本、謄本はご自身でも保管することになります。
自筆証書遺言の場合
法務局の保管制度を利用するのが最も安全です。自宅の金庫や貸金庫での保管も考えられますが、相続人に発見されなかったり、発見した相続人が自分に不都合な内容を隠匿したりするリスクがあります。
自筆証書遺言の紛失・改ざんのリスクや、検認手続きの負担を軽減するため、2020年から法務局で自筆証書遺言を保管する制度が始まりました。この制度を利用すれば、原本は法務局で安全に保管され、家庭裁判所の検認も不要になります。
遺言書の執行
遺言書を作成する場合、井上法律事務所では遺言執行者を指定することをお勧めしています。
遺言執行者を指定している場合には、遺言執行者が単独で遺産の分配を行うことができますが、遺言執行者が指定されなかった場合、相続人が共同で遺言の内容を実現することになるので、不動産の登記や預貯金の払戻しには相続人間の協力が必要となります。
                  ただし、特定の財産について特定の相続人のみが相続するという内容であれば、その相続人が単独で行うことができます。
遺言執行者とは?
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な一切の権限を持つ人のことで、不動産の名義変更や預貯金の解約・分配などの相続手続きを単独で行うことができます。
                  遺言執行者を指定しておくことで、相続手続きがスムーズに進み、相続人間のトラブルを防ぐことができます。
遺言執行者の役割と具体的な手続き
遺言執行者に就任すると、まずすべての相続人に対して就任と遺言内容を通知し、そのうえで遺言者の財産(プラス・マイナス双方)を調査して相続財産目録を作成・交付します。
                  続いて、預貯金の解約・払い戻し・分配、不動産の名義変更(相続登記)、株式など有価証券の名義変更、相続人以外への遺贈の引渡しなど、遺言内容の実行に必要な各種手続きを進め、すべての手続きが完了した段階で相続人に任務完了を報告します。
誰を遺言執行者に選ぶか?
遺言の内容が比較的シンプルであれば、相続人や信頼できる親族を遺言執行者に指定する方法が考えられますが、内容が複雑であったり相続財産が多岐にわたる場合は、手続きを円滑に進めるためにも弁護士を指定することをおすすめします。
弁護士が遺言執行者となることのポイント
複雑な相続手続きでも円滑に進めることができます。
                  遺言執行のプロセスには、多くの煩雑な手続きが含まれますので、専門家に一任することで、相続人の負担を軽減できます。
                  ただし、専門家への報酬(費用)がかかることに注意が必要です。 
遺言書に書けること
法的効力のある内容
遺言書に記載することで法的効力が生じる主な事項として、まず財産の分け方の指定があります。これは「妻に自宅不動産を、長男に預貯金を相続させる」など、法定相続分とは異なる割合や具体的な分配方法を示すものです。
                  次に遺贈があり、相続人ではない人、たとえば子の配偶者(お嫁さん)や孫、内縁の妻、お世話になったご友人、慈善団体などへ財産を譲ることができます。
                  さらに、子の認知として、婚姻関係にない女性との間に生まれた子を自分の子として法的に認知し、相続権を与えることもできます。
                  加えて、相続人の廃除を定めることができ、ご自身に対して虐待や重大な侮辱を行った相続人の相続権を剥奪する意思表示を行えます。(ただし、最終的には家庭裁判所の判断が必要です。)
                  最後に、遺言執行者の指定も可能で、前述のとおり遺言内容を実現するための執行者をあらかじめ定めておくことができます。
法的効力のない内容
付言事項として、内容に制限なく記載することができます。
例えば、遺言を作成した動機、なぜそのような遺産分割にしたのかの理由説明、相続人や関係者への感謝の気持ち、家族への思いなどを遺言書にしたためることができます。
                  また、葬式や法要の方法、献体や散骨の希望なども記載できます。
遺言書作成の際の注意事項
遺言書作成の際に注意すべきなのは「遺留分」についてです。遺留分とは、配偶者や子など一定の相続人に法律上保障された、最低限の遺産の取り分のことです。たとえ遺言書で「全財産を長男に」と書いても、他の兄弟は自身の遺留分に相当する金額を長男に対して請求する権利(遺留分侵害額請求権)があります。遺留分を無視した遺言書は、新たな争いの火種になりかねませんので、ご自身の意思と遺留分のバランスをどう取るか、ご相談いただくことが重要です。
遺言作成にかかる費用
遺言書、特に公正証書遺言の作成費用は「公証人手数料」と「弁護士報酬」の2つで構成されます。
                公証人手数料は、公証役場に支払う法定の手数料で、相続させる財産の価額や受取人の数に応じて法律の基準に基づき算定され、計算方法はやや複雑ですが相続財産が1億円以下の場合は数万円程度となることが一般的です。
                弁護士報酬は、遺言内容の複雑さや財産の額に応じておおむね11万円〜55万円が目安となります。当事務所では、ご依頼前に必ず明確な費用をご提示し、ご納得いただいた上で手続きを進めますので、どうぞご安心ください。
まとめ
大切なご家族のために、今できる準備を
遺言書の作成は、決して特別なことではありません。ご自身の人生の集大成として、そして何より、大切なご家族の未来を守るための準備となります。
「まだ早い」と思っているうちに、時間はあっという間に過ぎてしまいます。ご自身の意思がはっきりしている元気なうちに、思いを形に残しておくことが重要です。
また、法律の専門家が関与しない遺言書には、思わぬ落とし穴が潜んでいることもあります。
当事務所では、広島の皆さまの相続に関するお悩みに、親身に寄り添いサポートすることをモットーとしております。
まずは無料相談から、お気軽にご連絡ください。